漂流する言葉は、私たちを翻弄する
ミヤシタパーク3Fのギャラリー・SAIにて、現代美術家・イチハラヒロコによる個展「幸せは目の前。」 が、2026年2月12日(木)〜3月1日(日)まで開催される。
イチハラヒロコは、言葉を素材に、日常に潜む感情やユーモアをポップにすくいあげる表現で知られる。東京都現代美術館等での展示をはじめ、デパートの外壁工事仮囲いやスケートリンクをキャンバスとした屋外展示も多数。神社への「恋みくじ」の設置、イギリスのショッピングセンターで「万引きするで。」と書かれた紙袋2000枚の配布パフォーマンスをするなど、その活動はユニーク。
イチハラはこれまで、日常的な言葉を文脈から切り離し、空間に「イメージ(もの)」として展示することで、「言葉」そのものに焦点を当てた作品を発表し続けてきた。日常感覚に根ざした短い日本語のフレーズが壁一面に並ぶ光景は、SNSのタイムラインが空間に溶け込んだかのような軽やかさをまとう。
本展では、イチハラが1990年代より継続的に制作してきた、キャンバスにシルクスクリーンを施した作品群の中から約30点を展示するほか、イチハラヒロコの「恋みくじ」も設置。絵画のように配置された言葉が漂流する空間のなかで、フィードに流れてきたお気に入りを保存するような感覚との出会いを体感できる。
テキストと文体の軽やかさを反復し、文脈から切り離された言葉が視覚的快楽として立ち上がるイチハラのスタイル は、言語を主要なメディアとしたコンセプチャルアートの旗手、ローレンス・ウィナーの手法とも重なる。同時に、彼女の作品が内包する簡潔なフレーズと均整の取れた文字組みや配置、印刷や複製の感覚を伴うシルクスクリーンの均質な質感は、”広告の視覚言語”を想起させる。
誰もが公共へと言葉を発信できるようになった現在において、言葉は「伝えるもの」から「消費されるもの」へと変質した。それでも感情を帯びた言葉はなお私たちを翻弄し、乾いた都市のなかで内的風景を映し出す。イチハラの作品で埋め尽くされた空間が、広告や情報であふれる表参道・原宿の街と共鳴するさまを捉えてみてほしい。
■概要
イチハラヒロコ 個展「幸せは目の前。」
開催期間:2026年2月12日(木)〜3月1日(日)
開催場所:SAI
住所:東京都渋谷区神宮前 6-20-10
RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
電話番号:03-6712-5706
開廊時間:11:00-20:00
休廊日:なし
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神宮前3丁目のアートスペース・hRp_a では、コンテンポラリーアーティスト MOMO による個展「Swimming」が、2月13日(金)まで開催中。彼女も"言葉"をモチーフとし、恐れや愛、欲望、承認といった、人間の内側に根深く存在する衝動を描き出すアーティストです。「言葉はものを捉え切ることができない」——そんな体感が宿った作品群の波間を、ゆったり泳いでみて。
※敬称略
Text:Rumi Hasegawa
INFORMATION
ミヤシタパーク・SAIで 言葉を素材とする現代美術家 イチハラヒロコ による個展「幸せは目の前。」が開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
- 電話
- 03-6712-5706
- 営業時間
- 11:00-20:00
- 定休日
- 会期中なし
- 開催期間
- 2026年2月12日(木)〜3月1日(日)
- 長谷川瑠美
外部ライター


























